障がいと発達
発達障がいのある児童の心理発達と支援
発達障がいのある子どものなかにはコミュニケーション行動の質的な障がいをもっているが、知的発達に問題のない子どもや、知能の高い子どもがいる。彼らの多くは、障がいに気づかずに普通学級に通っていることも多く、学校生活では少し理解しにくい、少し困る子どもと思われながらも、その子どもの個性としてみなされていることも少なくない。一方的な話し方、雰囲気に応じた感情表現が柔軟にできず独特な語調である、内向的で興味があることには熱心で才能があるといった面が個性が強いと理解されていることが多い。
神経発達症群
出典:日本精神神経学会監『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、33頁、2014
DSM-5の診断基準では、知的能力障がい群とコミュニケーション症群、さらに自閉スペクトラム症等に分類され、以前のDAM-Ⅳ-TRより、障がいの区分や特徴を明快にしている。
知的能力障がい群
知的能力障がい群の基本的な特徴はDSM-5の診断基準によると、全般的知能の欠陥(診断基準A)と、個人の年齢・性別および社会文化的背景が同年代と比べて日常の適応機能が障がいされている(診断基準B)ことである。発症は発達期の間とされている(診断基準C)。
知的能力の障がいについては、日本では1920年代から「精神薄弱」として、1999(平成11年)年より、法律上の名称が「知的障がい」に変更された。DSM-5では知的能力障がい群として位置づけられている。
知的能力障がい群
出典:日本精神神経学会監『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、33頁、2014を一部改変
注意欠如・多動症
DSM-5における診断基準は従来のDSM-Ⅳ-TRとおおむね同じであり、①不注意、②多動性・衝動性について一致している。
子どもは本来元気で落ち着きがないことが多いが、遊びに限らず食事や授業中でも妙に動き回る子どもがいる。話を聞くことが苦手で動き回ることで周りと不適切になる場合である。「周りとの不適応」が生ずる多動や注意欠陥を、注意欠如・多動症(ADHD;Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)と呼んでいる。
ADHDだけではなく、多くの発達障がいのある子どものなかには、コミュニケーション行動の質的な障がいがありながらも、一人でできる得意なものや興味や関心のあるものは、何時間も集中して打ち込むことができるので好成績を得て、それが自信につながり対人関係の改善につながる場合もある。つまり、周囲の者はこれらの個性を理解しながらかかわっていくことが大切である。この関心のあるものへの熱意や執着は、才能であり、本人の自信になる。獲得した自信をきっかけに対人関係のとり方を具体的に学んでいくような支援も必要である。
注意欠如・多動症
出典:日本精神神経学会監『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、73頁、2014